クリスマス?ミチ差しってなんだ?
12月で、緑色で、てっぺんには雪を載せているように見えるけれど、ツリーのオブジェではない。赤と白の螺旋は、クリスマスのオーナメントを思わせるけれど、やっぱり全く関係なし。これは、花火の製造工程“ミチ差し”に使う道具。
赤と白の糸が巻き付いた棒状のものがミチ。これを穴が開いた半球状の玉皮に差し込むことをミチ差しという。ミチの中には火薬が詰まっている。点火するとまずミチに火が入る。イラストでよくある、球体の時限爆弾からひょろっと出ている線、あれと同じ役割をする。
降り積もった雪のように見えるものの正体はボンド。緑の円錐ツリー風なものは、ボンドを絞り出しておくための土台だ。ミチに直接ボンドを付け、回しながら玉皮に差しこむ。ボンドが乾けばミチはしっかり玉皮に固定される。
こうしてミチ差しの終わった玉皮と、ミチのない半球状の玉皮の中に、それぞれ火薬が込められていく。ガチャガチャのカプセルのように、カポッと合わせれば綺麗な球体が出来上がる。完成までは、まだまだいくつもの工程がある。
仕事のやり方を考える
花火の小さなパーツを何百何千と作るから、作業しやすい体勢、道具の配置場所、無駄のない手順にはとても気を遣っている。
先ほどのミチ差しでもそう。ミチでボンドを掬うと、ボンドの角がピンと立つ。角に対して自分が掬いやすい方向は決まっているから、いつも一定の方向から掬えるように、台の角度を微調整する。その方が結果、早く綺麗なものができる。
こちらは、打揚現場で使用する点火モジュール。つまみ部分に花火と繋がった導火線を差し込む。
花火の出る順番がプログラミングされた大元のスイッチを入れると、電気が導火線を走り、番号に対応した花火が空に打ち揚がる仕組みだ。
番号が若い方から繋いでいく。作業をする中で手の移動距離が長くなってきたら、モジュールをくるっと回して上下を入れ替えるのだそう。これで常に作業がしやすいワーキングゾーンを確保することができる。簡単なことだけれど、“数字は正面から見るもの”という概念から脱却できない限り、この発想は生まれない。頭は柔らかくしておかなければ!
セットが完了し、今か今かと打揚を待つ花火群。人々に与える感動の出発点でありつつ、無駄を排除し、最大限に追求した結果の具現化でもある。クリスマスのこの風景だって、ただただ綺麗なだけではない。キラキラの裏に携わった人の数知れない創意工夫を秘めている。
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