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CASE STUDIES & OTHERS

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火薬の危険を正しく恐れる


火薬の危険性を理解する

 花火を製造することと、その危険性を理解することは必ずセット。

よく知り、正しく恐れることが大切。


この日は年に4回行われる保安教育の日。

火薬の危険性とその安全な取り扱いについて、意識を新たにする機会だ。


一般的に「慣れること」は良しとされているけれど、同時に油断や過信を招くこともある。

花火の会社にとって危険性への慣れは文字通り命取りだ。



火薬類取締法の遵守=安全の確保

覚醒剤取締法、銃砲刀剣類所持等取締法、毒物及び劇物取締法。

誰でも直感的に「危険なもの」「怖いもの」と想像がつく。取締という名前がつくのは、極めて危険性が高いものを制限・禁止する法律だけ。そして、火薬の取り扱いを規制する法律も「火薬類取締法」と呼ばれる。


火薬の脅威は花火の感動に上書きされてしまいがちだけれど、取扱いを間違うと本当に危険。ひとたび誤発が起これば、周辺一帯を吹き飛ばすほどの威力がある。

火薬類取締法を守ること=災害を防ぎ、公共の安全を確保することにつながる。



工室(作業部屋)の危害予防規定 

花火の製造から消費までの工程にそれぞれのルールがある。

工場内に限定して抜粋して紹介しよう。


製造作業を行う工室にはどんな決まりがあるか。

それを知るには工室内の掲示を見るのが一番。


-この工室では何の作業をしてよいのか

-何人まで入っていいのか

-火薬はどのくらい置いていいのか

-工室に入る前に静電気を除去すること


などなど。考えうる状況を列挙して規定している。


ちなみに、加藤煙火では工室内に携帯の持ち込みを禁止している。携帯の発する電波が原因と推測される、海外での事故事例があるためだ。


ルールの掲示がずらりと並ぶ工室
ルールの掲示がずらりと並ぶ工室

運搬のルール

危険区域外に火薬を持ち出してはいけない。


工場内には大きく分けて2つのエリアが存在する。

・火薬を扱うエリア=危険区域

・火薬を持ち込まないエリア


この2つのエリアは有刺鉄線で隔てられていて、見た目にも意味においてもはっきりとした境界がある。境界線を越えて火薬を危険区域外に持ち出すのは、花火の現場や別の火薬庫に移すときなど、本当に限られた場合のみ。その際には、厳重な管理と注意が必要になる。

危険性をはらんでいる火薬の所在を常に明確にしておくことは、安全の確保には必須条件だ。


赤い看板より向こうが ”危険区域”
赤い看板より向こうが ”危険区域”

安全への鍵は、個々の意識にあり

工場では、保管や運搬のために多くのコンテナや段ボールを使用する。中には落下の衝撃によって高確率で発火する火薬もある。平時でさえ危険はいつも隣り合わせだが、地震のような予測不能な未曾有の災害にも、確実に安全を確保しなくてはならない。

保安教育の様子
保安教育の様子

そのために、置く場所は適切か、落下の危険はないか、積み方に問題はないか、行動に伴う結果を常に予測することが大切だ。結局安全を守るために一番重要なのは、扱う人の「意識」

意識や理解が欠落していては、ルールは形ばかりのものになってしまう。


だからこその年に4回の保安教育だ。私たちは繰り返し危険について学び、そのたびに恐れ、集団として意識を高めている。



 

執筆者:内藤みのり

加藤煙火入社2年目。花火師ではなく事務職。新潟県長岡市出身。2児の母。趣味はスポーツ観戦と読書。文章は日課の犬の散歩中に浮かんでくることが多い。



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